こんにちは、よっぷです。今日はテクノロジーの話。人工知能=AIについて考えてみたいと思います。AIというと、AppleのSiriや、AmazonのAlexaを思い浮かべる人も多いでしょうか。文系の人でもAIについて理解できるように、概要と今後どう使われるかを書いていきます。
AIが面接官に?
こんなニュースが出ていました。物流機器を提供するユーピーアールという会社が、2020年度の新人採用でAI面接を試験的に導入するというもの。
ユーピーアール、AI面接サービス「SHaiN」を試験導入
https://www.zaikei.co.jp/article/20190221/496067.html
よくよくプレスリリースを読んでみると、物流業界では初とのことですが、このユーピーアールが導入したAI面接サービスは、17年から提供開始していて、既に70社の利用があるそう。
24時間、場所を問わず面接ができる/受けられるのがメリットで、地方の志望者や、他の企業と面接・試験の日が被ってしまうなどのマッチング機会損失を避けられるのが売りのようです。
ちょっと精度までは分かりませんが、多くの志望者がある企業の場合、絞り込みには役立つのではないでしょうか?
色んな技術と掛け合わせることで力を発揮
AIの導入がもう未来の話ではないということですね。AIはこれまでにも、いくつか注目される時期がありました。囲碁や将棋のプログラムとして、またSFの文脈でも。特にSFについては、映画/小説『2001年宇宙の旅』でのHAL9000がかなりのインパクトで描かれ、人々に衝撃を与えました。人知を超えて、人を攻撃・排斥するようなAIというモチーフは、その後のSF作品のいちジャンルになります。
現在、注目されているのは、やはりスマートスピーカーなどのAIアシスタントが一般化してきているからでしょう。Siriがその先行となりましたが、声で応えてくれるアシスタントが日常的に使えるようになったということは、最初はやはり、なかなかの衝撃でした。
それに加えて、今後のAIがさらに便利になることが予測されているということもあります。ビッグデータ、データ分析、IoT、センサー技術、ディープラーニングなど、これらは単独で使われる技術ではなく、組み合わせることで力を発揮していくことになります。
AIは”選択”に便利
AIはより良い選択が可能になるというところで効果を発揮すると言われています。現在AIが使われる場面を想像してみれば分かります。
一番身近なのは、AmazonやNetflixなどのレコメンド機能。この製品を買った/この動画を閲覧した人に対し、同様の購買・視聴傾向がある人が好んでいる製品/コンテンツを紹介してくれます。
これは、AIが蓄積されたデータを分析し、「似た傾向の人が好むもの」を選択し、提示してくれているのです。
似たような例では、病院の診察にも使えると言われています。症状や年齢・身長・体重・心拍数などのヘルスケアデータ、生活習慣などから、適切な治療法を選択してくれる。
物流の最適なルート検索、資産などのポートフォリオ運用など、用途の広がりが期待されます。
量子コンピュータがAIを進化させる
こうした選択を可能にしてくれるのは、AIのプログラムと一緒に用いられるコンピュータの進化がないといけない。従来のコンピュータでは、計算に時間がかかりすぎるという課題があったそうです。それを解決してくれそうなのが、「量子コンピュータ」というものです。量子コンピュータをwikiで調べると、このように出てきます。
量子コンピュータ (りょうしコンピュータ、英語:quantum computer) は、量子力学的な重ね合わせを用いて並列性を実現するとされるコンピュータ。 従来のコンピュータの論理ゲートに代えて、「量子ゲート」を用いて量子計算を行う原理のものについて研究がさかんであるが、他の方式についても研究・開発は行われている。
ちょっと何いってる分からないですね。
ですが、この量子コンピュータがAIの活用には重要な役割を果たすというのです。西森秀稔/大関真之『量子コンピュータが人工知能を加速する』(日経BP社、2016)がこの辺に詳しいです。
この本によると、量子コンピュータは非常にAIと相性が良い。特にここ近年商業化された従来の「量子ゲート式」ではなく、「量子アニーリング方式」というコンピュータの到来が決定的だったとか。それは同方式の量子コンピュータが「組み合わせ最適化問題」を解くこと得意だから、だそう。
カナダのディーウェーブシステムという会社が発表した量子コンピューターはある特定の問題を解いた時に1億倍高速であると言う結果が出たそう。その問題こそが「組み合わせ最適化問題」です。この会社のコンピュータはグーグルやNASAも導入しています。
例えば宅配便のドライバーがどのようなルートで荷物を届けていけばいいのかという問題。ドライバーが1日に回らなければならないポイントが5カ所あるとするとそのすべてのルートの組み合わせは120通。10カ所だとするとすべての組み合わせは約360万通りに。15カ所回るとするとすべての組み合わせはなんと1兆3000億通を超えることになります。そして、ポイントが30カ所だとするとスーパーコンピューターの京を使ったとしてもおよそ8億年かかるのだそう。
ディーウェーブの量子コンピュータはそれを1億倍速く解けるということですね。
こうした組み合わせ最適化が従来よりも速く行われる、低コストで行われるようになれば、上で挙げたような選択が必要な領域において、莫大なデータを用いて、より高い精度で実現できるようになるようになるのです。
人工知能が専門性を代替する
上記の宅配便の例などでは、数十ヶ所に配達ポイントがおよんだ場合、最適解をコンピュータで導き出すことが困難でした。でも、ある程度経験を積んだベテランでは、最適ではなくとも、なんとなく効率の良いルートで回ることが出来ていた。
これは宅配便だけでなくても、大型レストランなど大量のスタッフが必要な仕事のスタッフ回しなどにも言える。ベテランの経験と勘が、その仕事の専門性として重宝されていた訳です。
AIはこれら経験と勘による専門性を代替することができる。宅配便もルートだけでなく、特定の人の不在率、天候、渋滞状況などを踏まえて、さらに最適化できるでしょう。天候などを見てその日の漁場を変える漁師の仕事も、AIを使って効率化できるかもしれません。
複雑に、多数の要素が絡む問題の最適解を、莫大なリアルタイムのデータを用いて算出してくれるのがAIの役割となります。上で挙げた資産ポートフォリオを組むファイナンシャルアドバイザーの仕事、簡単な病気の診察業務などはAIに取って代わられるようになるでしょう。
シンギュラリティは起こるか
『量子コンピュータが人工知能を加速する』では、シンギュラリティ、つまりAIが人間の知能を越えるタイミング、その日が来るかという点にも触れていました。
上記のHAL9000や、アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』の「シビュラシステム」のように、意思を持って行動を起こすAIが到来する日は来るのでしょうか。
少なくとも数十年は来ないというのが今の見立てのようです。確かに、今のAIは取り込んだ情報を分類、判断する能力しかない。AIアシスタントを日常的に使っている人でしたら分かるかと思いますが、その情報をAIに理解させるにも、ある程度プログラミング的にというか、分かりやすい指示にして取り込ませる必要があります。
AIが情報を取り込んだり、分析したり、判断したりするには、まだ人の手が必要です。あくまでAIはコンピュータの高度なプログラミングでしかない訳です、今のところは。
複数のAIが接続がされ、あるAIで分別された情報が、次のAIへの指示となり、次の答えを導き出していくという、AIのチェーンが可能になれば、もしかしたらシンギュラリティは来るかもしれません。