こんにちは、よっぷです。2024年のパリ五輪で、ブレイクダンスが正式種目に追加されるかもしれないと言うニュースがありました。私は一時期クラブカルチャーにどっぷりハマっていた時期があり、その時にストリートダンスも傾倒していました。なので、ストリートダンスを見るのは好きなのですが、今回のブレイクダンスがオリンピックの競技になるかも、というのには、複雑な気持ちになります。ダンスが盛り上がるのは好ましいんだけど、本心は競技になってほしくないなぁ、と。
踊りは数値化できない
その理由は、ダンスの面白さって数値化できないところにあると思うからです。もし競技化され、採点されるような種目になれば、点を取りに行くダンスのスタイルになってしまう。ダンスが、型に捕らわれないものから、型を重視するようになってしまう。それはダンスをつまらなくしちゃうんじゃないかと思う訳です。
それに、見る人の解釈の余地を排除してしまうことになってしまう。こっちの方が良かった、みたいな感想を言っても、それが採点が低ければ、素人が何言ってんだみたいな感じになってしまいますよね。これも寂しい。
芸術点みたいなものもある。そういうのを導入すれば?という意見もありそうですが、これは違う。フィギュアスケートのように型の綺麗さ、みたいなものでブレイクダンスのようなタイプの踊りの芸術的価値は図れないでしょう。
ダンスの価値は、その時々もしくは評価する人や文化によって上下するものです。価値や評価を固定化できるわけがありません。
ストリートダンスは対話
少しだけ自分が思うダンスの面白さについて紹介させてください。
多くのストリートダンス、そこにはヒップホップ、ハウス、ブレイクダンスなどがありますが、基本的にはクラブミュージックとのカルチャーの中で成長してきました。
ストリートダンスの良さは、バレエや、日本舞踊などと違って、型の面白さでは無いのです。音楽ありき。本当にここが重要です。音楽に対する自分の反応だったり、身体的な反応だったり、解釈だったり、即興性だったり、そういうところが面白いのです。
昔、バレエが好きだという人に、ストリートダンスの動画を紹介しようとしたことがあります。言っているように音楽が重要ですから、動画を再生し、イヤホンを貸そうとしたところ、、、
「いらない。大丈夫」と。
動きだけで、音を聴かずにみようとしたわけですね。いやいやいや。大丈夫じゃないですよ。10分ほどストリートダンスにとって如何に音楽が重要か、講釈を垂れてしまいました。
バレエやジャズダンスをやっている人に、ストリートダンスは音楽とリンクすることが重要だと言ってもなかなか理解されないんですよね。ちょっと違いをみてみましょうか。
1つ目は日本のバレエのレジェンド、熊川哲也さんの踊り。2つ目はハウスというジャンルのダンスのレジェンドのダンスです。
見比べていただけましたでしょうか?音楽の使われ方が全然違うことが理解いただけると思います。バレエの場合は、その世界感の中で遊んでいる感じとでも言いましょうか。音楽をテーマとして踊っている感じですね。リズムは2の次です。
一方のハウスダンスでは、音やリズムに忠実。音して反応することで遊んでいる。もちろん、その曲調によって踊りの強度が上がったり下がったりはしていますけどね。
なので、音楽を大事にするストリートダンスでは、かかる音楽が何なのか?それと自分の相性はどうなのか?そういった自分では対応しにくい外部要因も強い訳です。
バトルを誰が審査するの?
おそらくブレイクダンスがどのような形で競技になるのか分かりませんが、バトルと言う手法を採用すると思います。現在もストリートダンスには勝ち負けを競う大会はあります。でも、これらの大会では、オリンピックでやるような普遍的な審査基準があるわけではないのです。
バトルでは音楽がかかって、そこに自分の踊りを乗っけるというか、音楽と一体化することで自分を表現する。基本的にバトルは即興です。DJが流す音楽(その曲はダンサーには前もって知らされていない)を聴いて、リズムを感じて、全体的な曲のイメージを表現しながら、身体で音と会話していく。
そこにはいくつかの要素がある。1つは身体性。どれだけ大きく体を動かすことができるか、難しい動きをすることができるかですね。この点だけであれば、技術的なものとして評価・審査することができるでしょう。しかし私が面白いと思っているブレイクダンスはそういうことではないんです。
音楽に対する解釈。ここが1番面白いところです。リズム、フロー、メロディー、リリック、音楽には様々な要素があります。それを自分の解釈で抽出したり、全体的なフィーリングを掴み、踊りに変えていくことが求められます。曲の雰囲気、踊りムーブ、醸し出すフィーリングなど、それが良い具合にミックスされているダンスを見ていると本当に気持ちが良い。逆にそういうのが上手く噛み合っていないと、いくら難しいムーブをキレイに決めても、格好よくならないこともあるのです。
ストリートダンスは無限大の広がりがある。だからそれを型にはめるようなものにしてしまう競技化は、個人的に好ましくないなぁと思うのです。
あとは審査の難しさもあるでしょう。その時に流れる曲に対して即興で踊る訳ですから、自分とその曲との相性など運要素も強い。それに、踊りが自由なだけに、最終的には好みになってしまう。それはバトル大会では常に議論されるところです。だから、大きなバトル大会のジャッジは、そのジャンルで貢献してきた権威的なダンサーにしか任されていない現状があります。
ここまで競技化の難しさを説明してきましたが、確かに若干、ブレイクダンスはヒップホップやハウスといったジャンルに比べて、技になんとなくの難易度があり、若干審査しやすい/競技化しやすいという面はあるかもしれません。いかにその動きが超人的かというのもブレイクダンスの面白さの一つであることは否定しません。
ですが、その流れが他のストリートダンスに波及していくのは嫌だなと思う訳です。ブレイクダンスがオリンピック競技になるなら、ヒップホップも、ハウスも、みたいな運動は起きそうですしね。それは避けたいなぁというのが個人的な思いです。