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ソフトバンクはAmazonを追うか――続く物流への出資①

こんにちは、よっぷです。ソフトバンクの物流への投資が目立っています。配送ロボットなどのガジェットだけでなく、先進的な取り組みをしている物流スタートアップへの出資が続いています。Amazonは自社で強固な物流インフラを構築したことで成功したと言われていますが、ソフトバンクもその動きをフォローしているのではないかと考えられます。

今回はソフトバンクがどのように物流への投資を行っているのか、そもそも物流とはどのような業界なのかを見ていきます。

ファンド会社、ビジョン・ファンドでスタートアップ支援

ソフトバンクは、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)というファンド会社を通じて、スタートアップ企業への投資・支援を行っています。

ファンドのビジネスを理解していない人には分かり難いかもしれませんが、自分たちだけじゃなくて、他の出資者も募り、投資するかたちですね。ソフトバンクは、サウジアラビアの投資会社とSVFを設立しました。投資先の選別などの運用面はソフトバンクが担っています。

また、SVFの役割について、ソフトバンクの公式ページでは、革新的なテクノロジーや起業家への投資を推進していくとしています。

より大規模かつ長期的な投資活動を目指し、IoT(Internet of Things)、AI(人工知能)、ロボティクス、モバイルアプリケーションおよびコンピューティング、通信インフラならびに通信事業、計算生物学、その他データ活用ビジネス、クラウドテクノロジー、ソフトウエア、消費者向けのインターネットビジネス、金融テクノロジーなど広範囲のテクノロジー分野において、上場・非上場、保有株式割合の多寡を問わず、新興テクノロジー企業から大企業まで、投資を行っていきます。

 

続く物流スタートアップへの投資

このSVFの機能を使ってソフトバンクは様々なテクノロジー企業/スタートアップに投資を行っている訳ですが、このところ物流や、物流関連のテクノロジーへの投資が目立っています。この半年だけでも、下記のニュースが見つかります。

件数もかなりのものですが、額もソフトバンクだけではないとは言え、かなりのものです。しかし、なぜ今、物流への投資を進めるのでしょうか? まずは物流という産業自体の課題についてみていきましょう。

物流はイノベーションが起こりにくい分野とされていた

 

近年こそ、Amazonが自分たちで物流を構築したり、IoTやブロックチェーンとの親和性により、注目が集まってきている物流ですが、少し前まではイノベーションが起こりにくい分野とされていました。

理由はいくつかあるのですが、変動が大きいこと、オペレーションに複数の業者が絡む、情報の非対称性によるビジネスのため閉鎖的、ということが挙げられます。

変動の大きさ

製造業や小売などの有形商材を扱っている人であれば想像しやすいと思いますが、調達・発送というのはなかなか計画通りにいかないものです。レギュラーのオーダーに加えて、追加発注があったり、バイヤーからの細かい指定があったり。

複数のサプライヤーから調達しているような企業であれば、それを細かに管理する必要もあります。それとECの台頭により、個人の細かいオーダーに応えていかなければいけないという流れもある。

季節的な波動、商品に対する需要の波、アクシデントによる緊急発注など、物流業が扱う物量は日々変化します。

オペレーションに複数の業者が絡む

物流というのは非常に複雑です。

特に海外から調達/海外へ発送する場合など、通関、一時保管、空港や港の使用料、現地でのトラック手配などさまざまな業務が必要です、場合によっては梱包や特殊輸送の付帯料金が発生します。また複数サプライヤーから商品を集めて発送する場合などは、その手間も必要です。

物流会社は全てを自社でやっている訳ではありません。得意分野以外は請負業者やパートナー企業に任せ、自分たちはその手配、コーディネートをすることが仕事です。

上記の例では、通関業者、一時保管の倉庫業者、空港・港のターミナル業者、トラック輸送業者が関与し、また梱包業者や特殊な手配を行う業者を頼ることもあります。

そうした業者が毎回同じとは限らないということも重要です。変動も大きいため、毎回同じ業者に仕事を振れないのが現状です。

物流のデジタル化、オートメーション化というのは、こうした企業間のつながり、システム連携なしには成し得ないのですが、1社だけでもデジタル化など難しいのに、中小のトラック会社なども含めて全体をデジタル化していくなど、本当に至難の業でしょう。

情報の非対称性

物流の料金は、手数料などは決まっている部分もありますが、変動的でブラックボックスになっていることが多いです。

上記の海外輸送の場合などは、明細も非常に長くなります。こうした業務を物流会社が代替し、一括して引き受けたりするのですが、それぞれの業務ごとに上乗せして見積り/請求書を作るのです。正味の原価というのは分かり難いし、物流会社も開示したくないですよね。

(注:物流会社も、さまざまな下請け会社・パートナー企業を使い分けて、複雑な物流を管理しているのですから、その分の料金を請求するのは悪いことではありません。儲けている物流会社はごくわずかです。上場企業の物流会社の大部分が利益率5%前後となっており、産業としての利益率は低い部類に入ります)

あとこれも海外への輸送に多いのですが、輸送費の問題。物流会社は基本的に、船会社や航空会社、幹線輸送のトラック業者などから、輸送スペースを仕入れて、荷主の代わりに輸送します。

ここでの仕入先の料金というのは企業同士の契約で決まるので、輸送費の原価というのも分かり難い。そして、物流会社も大口のお客さんや小さいお客さんのそれぞれで料金を設定しているので、荷主としては果たして適正な運賃なのか。相場が分からないことも多いです。

ここまでのまとめ

ソフトバンクは、投資会社のビジョン・ファンドを使って、さまざまな物流企業、関連テクノロジーへの投資を進めています。

その物流という産業は、さまざまな要因からイノベーションが起こりにくい分野でした。だからこそ、その分革新できる余地が残されている、と言うこともできます。

課題はいろいろあるものの、近年はその課題解決、革新に取り組むスタートアップもでてきました。ソフトバンクはそうした企業を支援することで、物流の機能を拡充しようとしています。

次回は、もっと踏み込んでなぜソフトバンクが物流に投資するのか、何を目指しているのか、考えてみたいと思います。

 

 

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