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ソフトバンクはAmazonを追うか――続く物流への出資②

こんにちは、よっぷです。前回のエントリーでは、ソフトバンクが物流への投資を進めているということ、そしてそれはAmazonの背中を追いかけているのではないかという指摘をしました。今回はAmazonの競争力が物流に注力することで成立しているということを説明したいと思います。

Amazonは物流に力を入れて大きくなった

Amazonがここまで大きくなっていったのは、顧客重視のインタフェース、品揃え等もその理由でしょうが、大きな要因の1つは、独自の強力な「物流インフラ」を整備していったからと言うことができます。ただモノを売るというのではなく、常にエンドユーザーへのリーチ、いかに利便性高く届けるのか、を考えていたのです。

『アマゾンと物流大戦争』 (NHK出版新書)という本を書いている角井亮一さんという方の解説が非常に分かりやすく、良い事例を紹介していくれています。

アマゾンの物流戦略はここまで徹底している―日本で宅配クライシスを乗り切れた真の理由
https://toyokeizai.net/articles/-/231845

この記事によると、米国での通販会社というのは、ほとんどがUPSを利用している/頼り切っているそうです。UPSというのは日本で言えばヤマトや佐川のような会社と言えば良いでしょうか。

Amazonがサービスを開始したのは1995年のことですが、2000年前後からのインターネットの爆発的な普及に伴って、取り扱いが大きく増えていきました。取り扱うモノも書籍だけでなく、そのロゴ(AmazonのAからZまで矢印が引っ張ってある)が示すように、全てのモノを扱うように拡大しています。

※そもそもAmazonがネット書店だったということを知らない人/覚えていない人もいるんじゃないでしょうか笑

UPSが対応できなくなると見越したAmazonは自社で物流の構築に急ぎます。宅配便シェア第3位のUSPS(アメリカ郵便公社、日本で言えば郵便)と組んで、当時なかった土日配送も実施。また、特定の州のみで事業を行っている地域宅配業者も使うなど、物流ネットワークを拡大していきます。

その後、日本などの米国以外も含め、受取日時の指定配達、コンビニ受取など、オプションを増やしていったのはご存じの通りです。

kindleも物流手段の1つだった

Amazonの創業者でCEOのジェフ・ベゾス氏は、顧客重視の経営をすることで有名です。(個人的に今のAmazonには不満もあるのですが)Amazonの顧客体験は非常に優れていると思います。買い物については、これに慣れてしまうと、他の日本の大手ECサイトなど使いたくなくなってしまう。

ここで1つ指摘しておきたいのは、電子書籍が普及するきっかけとなったKindleも、ある意味では物流ソリューションだったということです。

本そのものではなく、コンテンツがほしい、内容が知りたいという読者も多くいる。そうした読者に対して、いち早くそのコンテンツを届ける、もしくは僻地に住む人などに簡易的にコンテンツを届けるためにKindleが開発されました。

コンテンツをデータとして在庫するとともに、データを受信し、コンテンツを閲覧できるデバイス(当時はアプリはありませんでした)を、ユーザーの手元に置いておくように普及させる(=コンテンツのデジタル配送インフラを作る)というのがAmazonの戦略でした。

世界各地で物流アセットの整備へ

そして、2010年代になると、Amazonは各地で物流のアセットを確保していくようになります。UPSなどパートナーの物流企業と連携して、ネットワークを構築していく形から、自分たち主導の物流を作っていくようになる。

先の記事から少し長いですが、引用します。

今度は、アマゾンユーザーが多く住むエリアに独自の配送センターであるフルフィルメントセンター(FC)を積極的に設けるようになったのです。消費立地型への戦略転換をしたのです。

この2012年は、アマゾンが初めて消費税の高いカリフォルニアにフルフィルメントセンターを作った年です。消費税よりお届けスピードを優先したのです。

物流センターが、ユーザーから離れた立地にあると、当然ながらユーザーに届けるまで時間がかかります。その時間を短縮するために、消費立地型の物流センターを開設したのです。また、これにより、地域宅配会社の利用もしやすくなりました。

Amazonは併せて、物流戦略の転換を図っていきました。より消費者の近くにセンターを設けることで、いち早く消費者に商品を届けるようにする。これはアメリカだけでなく、世界各地で同じ動きをしていきます。日本でも首都圏だと、市川に大きな倉庫がありますが、そのほかにも都市部にデポを設けるようになりました。

自分たちで世界各地に物流のネットワークを整備していく小売り企業というのはAmazon以外にありません。ちなみに、Amazonの日本法人は倉庫業を持つ、物流会社として登録しています。もともとはアマゾン・ジャパンとアマゾン・ロジスティクスという2つの会社があったのですが、物流会社のアマゾン・ロジスティクスを存続会社として2016年に統合しました。

Amazonは輸送用の大型飛行機も持っている

アセットは倉庫だけではありません。

2016年にはAmazonは、航空輸送業界にも参入していきます。全米そして、欧州やアジアといった地域にもいち早く商品を届ける、もしくは調達するために、航空機の自社保有を進めました。

航空機リース(運航やメンテナンスサービスも含む)を行っている世界的大手のATSG、それにアトラスエアーという会社へ出資し、その会社から航空機のリースを行っています。その数は40機で、今後50機以上になるそうです。

Amazon 40機運用している専用航空機を10機追加発表!
https://saatsmedia.com/mail20181224/

また、大量輸送手段としてコンテナ船での輸送手段も確保しています。

米アマゾンの海運事業進出で、世界はヤバいことになるかもしれない
https://news.yahoo.co.jp/byline/sakaguchitakanori/20160203-00054050/

ここで、アマゾンがなんと中国・米国間でのNVOCC事業を自前化することが明らかになり、業界中に激震が走りました。物流企業(Flexport)は、連邦海運委員会リストのなかに、アマゾンの中国子会社(Beijing Century Joyo Courier Service Co., Ltd.)を発見したのです。さきのブログではご丁寧にスクリーンショットまで掲載しています。この子会社はかつてアマゾンが買収したところであり、オンライン小売業者です。

NVOCCとは「Non Vessel Operating Common Carrier」の略で、船舶等を有しない貨物業者のことです。アマゾンはまず他の船舶会社に依頼する形にはなりますが、非船舶運航業者として海運事業に登場することになりました。

ドローンや配達ロボットなど物流会社以上のテクノロジー投資

倉庫だけでなく、航空機や船での輸送手段を確保してきたAmazon。今度はラストマイルでの輸送手段の開発を行っています。

こちらは、Amazonがドローンで配送を行ったというテストの動画ですね。ドローンについては、機体の開発、特許の取得を進めています。

 

そしてこちらは最近のトピックスですが、自動配達のロボット「Scout」の開発を進めたというもの。1月くらいから本社シアトルの近くで実証実験を行っているそうです。こうした自動走行のロボットは、倉庫や工場などの屋内では既に使用が開始されていますが、屋外で使えるのか。こうしたロボットが街中を動き回っている未来はAmazonが作るかもしれませんね。

まとめ

倉庫、輸送、ラストマイル配達と、一連の物流チェーンを構築しているAmazon。これは、物流企業でもほとんど持っていないネットワークです。さらに、ドローンや配達ロボットなど、先進的なテクノロジーに投資し、ここまで実用化ている物流企業は2,3社くらいしかないでしょう。

このように、Amazonは物流に投資することで、その競争力を強めています。商品を販売し、消費者に届ける。小売りのカスタマーエクスペリエンスは物流にあるとして、最高の物流品質を追求してきたわけです。今後もその投資は継続していくと思われます。

ソフトバンクは、このAmazonの動きを追っていくのだと思います。それによって消費者へのリーチ確保、カスタマーエクスペリエンスの最大化を目指していくのでしょう。今後、ソフトバンクが物流で、どのような投資を進めていくのか、気になりますね。

 

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