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文系こそ論理力を身につけよう!

◆文系≠感覚的という誤解

 こんにちは、よっぷです。Youtubeをザッピングしていたら、「文系でもプログラミングはできる?」というレクチャー動画を見かけました。もちろん、その動画では、プログラミングを学ぶのに文系だろうが理系だろうが関係ないというお話をされていましたが、やはり文系というのは、理系に比べて論理的じゃないという誤解があるんだろうなと改めて実感しました。

 文系・理系というのを初めて意識したのは、高校生の時でした。私の通っていた高校は、2年生に上がる際に、文系と理系を選択することになります。当時の先生から、「大学進学で国公立を考えている人は理系の方が有利だ」と理系選択を勧められました。「理系の方がちゃんと勉強すれば点が取れる」という説明だったかと思います。

 今思うと、これは当たっている面とそうでない面があると思います。誤解されそうですが、数学や物理って、割と勉強すれば解ける問題が多い。それは解の導き方が限られるから、というよりその解の導き方が学ぶべきことなので、それさえ理解(または暗記)しておけば、答えにたどり着けるようになっているんです。

 一方、国語、特に現代文というのはやっかいな科目です。勉強していなくても、取れる時は点が取れるし、逆に点が取れないこともある。感覚的に点が取れる人も多いです。登場人物の心情を問うような選択問題で、なんとなく選択肢を絞るのが上手い人もいるでしょう。

 ただ、この波があるという人や、“なんとなく”で点を取れている人は、実は現代文の能力が低い。漢字などの知識を問う設問以外、文章読解の設問では、トレーニングさえすれば間違いはほとんどなくなる。それを理解していない人が多いと思います。

 ここで受験講座を展開するつもりはないので、説明は省きますが、現代文のテストで問われるのは、共感力でも、センスでもなくて、論理力だということです。それがあれば点を取ることができる。

 その理解がない人は、受けた教育が悪かったのかもしれません。私は現代文の能力を上げたければ、「たくさん読書をしろ」と先生に指導されました。当時はそのいいかげんさに気づきもしませんでしたが、改めて思い返すと、相当適当な指導だったなと思います。国語の指導って結構大変なので、仕方ない部分もあると思いますが、子どもを教育する以上、もう少しちゃんとして頂きたいものです。

◆哲学はもっと論理的

 哲学も、ちゃんと理解されていない学問ですね。哲学が日常の話題で出る時は、“人生哲学”だったり“これが私の哲学だ”などのように、“信念”と読み替えられるものが多いことがあると思います。また“その考え方は哲学的だね”のように、ちょっと人と違ったモノの見方というような意味合いで使われることもあります。

 大学等で哲学をちゃんと学んだ人は、学問としての哲学が、そういった意味合いのものでないことを理解していると思いますが、理解していない人がマジョリティなんじゃないかと思うことが多い。

 これに関しても、哲学の成り立ちや学問としての特性を説明する気はありませんが、簡単に言えば、哲学はモノの証明をする手段として発達してきた学問です。ですので、物事をさも難しいように言葉遊びをしながら論じる訳でなく、ある意味、数学のように(実際これは逆に数学が哲学的なのですが)、緻密に、論理的に論を積み上げていく
必要があるのです。

◆解像度を上げるために古典を読もう

 ですので、文系というのは、理系以上に論理的になる必要があります。文章の書き方にしたってそう。人に読ませる、納得させる文章を書くには、必要な要素を、適切な順番で配置していくことが必要です。

 またモノを分析する場合、理系には(数学的)公式や、科学技術といった武器がある。文系にはそれがないため、しっかり定義された言葉、概念を使って、事象を紐解いていく必要があるのです。

 そのために文系はどうするか、古典を読むことが一つです。ここでいう古典は、『徒然草』や『方丈記』のような国語の古文で読んだものではなく、学問として、または歴史を経ても評価される傑作のことです。マックスウェバー、マルクス、ハイデガー、ソシュール、など多くの学者たちが、モノを見る、紐解くための言葉や概念を発見・定義してくれています。それを読書によって身につけ、使えるようになると世界の色んなものが、高い解像度でみえるようになる。

 とは言っても、ぱらぱら上記の偉人の著作をめくるだけでは読書とは言えませんし、彼らの著作を理解するのは難しいと思います。とりあえず、気になった哲学者、社会科学者の代表作を一冊、時間をかけて読んでみるといいと思います。慣れてない人は何度も繰り返し読むのが良いです。

◆内田義彦『読書と社会科学』

 ここまで書いてきたことは、内田義彦先生の本を読むとしっかり理解できます。30年ほど前に亡くなった経済学者ですが、学問が生きることにつながると、その領域を広げた大変重要な思想家です。

社会科学というのはどういう機能を持つものなのか、勉強はどうしたらいいのか、という本を書いていまして、それらについて非常にわかりやすく教えてくれます。おすすめは岩波新書の『読書と社会科学』(1985)。普遍的な勉強の方法を教えてくれる名著です。今度はこの本の解説もしてみたいと思っています。

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